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わたくしが経験いたしました症例についての考察と対応についてご紹介いたします。

■2002/10/17 出題症例
症例 : 35歳、男性
主訴 : 繰り返す腹痛、下痢、便秘
現病歴: 2年ほど前から、上記主訴出現。 精査の末、過敏性腸症候群と診断された。
東洋医学的所見は腹直筋の緊張著明 両側 胸脇苦満

問診上でのヒントは
1.四肢の冷えを訴えるが、触診では温かい
2.よく、胃の痛みも自覚する
3.結構、神経質でイライラしやすい

着目点をどこに設定するかで考察の順番は変わりますが、内容は変わるわけではありません。

1) まず、腹診所見に着目してみましょう。 腹直筋の緊張に対応する生薬は「芍薬」 いわゆる胸脇苦満に対応する生薬は「柴胡」でした。
2) ヒント1の「手足の冷えという自覚はあるが、他覚的には温かい」とは東洋医学的にはどのような現象ととらえることができるか。これは以前お話いたしました「往来寒熱」と解釈することができます。ということは、これも柴胡を使うタイミングを示唆していると考えられます。

これらの理由から、「柴胡」と「芍薬」が配された処方を考えました。選んだのは『四逆散』です。腹証も適当であったと思います。

四逆散の四とは「四肢」、逆とは「冷え」のことで、「四肢が冷える時に使え」ということです。しかし、これはなにも「冷え症」に使えということではなく、「往来寒熱の冷え」に使えという意味です。

往来寒熱とはカゼをひいたような時には「熱っぽさと寒気が交互にくる」という意味でいわゆる少陽病期の臨床的特長、それは小柴胡湯など柴胡剤を選択する根拠です。しかし、元来の往来寒熱にはもっと広い解釈として「一人の人の中に寒熱が錯綜する」という意味があります。例えば上半身は熱いが下半身は冷えるとか…。

冷えの場合にも、「自覚的には冷え」でも「他覚的には温(または冷え無し)」のような場合には寒熱が錯綜していると考え、往来寒熱と解釈します。四逆散の「冷え」とはそういう意味です。

四逆散は四味(柴胡、芍薬、枳実、甘草)の処方ですから効き目もシャープです。実際この症例でも、服用2日後から下痢は消失し、その後すみやかに便秘と腹痛がほとんどみられなくなりました。一時、具合が良いので投与を見合わせましたが、また症状が出始めたため再度投与することとなりました。

この四逆散はなにも胃の痛みにだけ用いられるわけではありません。実に応用範囲の広い処方でもあります。過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、などなど症例報告が沢山ある処方でもあります。是非一度、参考文献を当たってみて下さい。

なお、この四逆散に限らず、「柴胡剤」を使うときの目安ですが、「柴胡」があくまで「湿と熱」を去る生薬であることをお忘れなく。だから、「舌が乾いている」症例などでは「禁忌」とお考え下さい。
 

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