会場でご紹介しなかった処方が答えです、というヒントも付け加えさせていただきました。
「おでき」とか「にきび」とか、このようなものに対しては色々な処方が用意されています。例えば、当日ご紹介いたしました「排膿散及湯」は排膿散と排膿湯のミックスで、前者で「膿を排出」し後者で「そこを治してゆく」といった意味があることでした。また、浸出液が沢山出ているような時には「消風散」なんていう選択肢もありましたね。昔からこのような症例は多々あったわけですから、それに対応する処方も多く存在します。
この症例では熱感と緊満感が著明でした。すなわち、「強い清熱」と「緊満を除く」両方の作用を兼ね備えた処方が欲しいところです。清熱には色々な生薬が用いられますが、何と言っても協力なのは「石膏」です。これが必要な症例でした。さて、それでは緊満をさばく生薬は、というと「杏仁と麻黄」の組み合わせということになります。この三者が顔を合わせる処方といえば…。
実際に用いたのは「越婢加朮湯」でした。あれれ、そういえば石膏と麻黄の組み合わせという考え方もできますが…。そうです、カゼの時にも、アレルギー性鼻炎のときにもお話いたしましたが、この組み合わせは「表の水を裏にさばく」だったですね。だから「ネフローゼ」なんていう適応症もあるわけです。このような意味でこの症例にはこの処方が適していたと考えられます。
それではもう一つ、問題。エキスで使える処方にはこれ以外ないのでしょうか?いいえ、もう一つあります。「麻杏甘石湯」です。一般的には「咳」に使われることが多いのですが、「腫れ物」や「痛風発作」に奏効した、なんて症例報告があっても「なるほど」とうなずけますね。
このように、漢方薬の理解はいつも「方意」からすれば、「どうして」が理解できて、「だから」と応用が利くわけです。
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